【物取られ妄想】通帳の次は印鑑!?カムバックしたゾンビと「口座凍結」のリアルな恐怖

事件

※この記事は、仕事と介護の両立に奮闘し、「親の理不尽な妄想」に心が折れそうなあなたに向けて書いています。

1. 朝の不穏:実家のテーブルに顔を伏せる母

前回の「通帳紛失事件」をなんとか笑顔の着地点へ導き、ホッとしたのも束の間。介護の神様は、容赦なく私に次の試練を与えてきました。

「サニーちゃん、おはよう!」と、いつものように努めて明るく大きな声を出して実家の玄関に入りました。

しかし、リビングへ向かった私は、その光景に思わず息を呑みました。 サニーちゃん(母)が、ダイニングテーブルに突っ伏したまま、じっと動かずにいたのです。

(ギョッ……! 何かが起きている……!)

背中に冷たい汗が流れるのを感じながら、私は恐る恐る声をかけました。 「どうしたの? サニーちゃん、どっか具合悪いの?」

すると、サニーちゃんはおもむろに顔を上げ、絶望に満ちた表情でこう言ったのです。 「もうね、本当に嫌になる。なんでアタシばかり、こんな目に遭わなきゃいけないの……?」

ただごとではない雰囲気に、私はごくりと唾を飲み込みました。 「サニーちゃん、落ち着いてちゃんとお話ししてくれる?」

「……ないのよ。印鑑が」

その一言を聞いた瞬間、私の心臓はドキンと跳ね上がりました。 頭の中で警告音が鳴り響きます。

(嘘でしょ……。本当に物取られ妄想がゾンビ化して、またカムバックしてきた……!)

2. 押し寄せる猛烈な疲労感と、「口座凍結」のリアルな恐怖

「だってさ、サニーちゃん。印鑑なんて最近まったく使ってないんだから、ちゃんと決めた場所にあるはずだよ?」 私は動揺を隠しながら、優しく語りかけました。

「それがないのは、なんでかしらねっ!」 間髪入れずに、トゲのある声が返ってきます。

語気は強いですが、その目の奥には「誰かに盗まれたかもしれない」という本気の恐怖と不安が透けて見えました。

二人でいつもの保管場所を確認しましたが、確かに、どこを探してもありません。 「あぁ、また印鑑か……」 頭がクラクラしてきました。

実は我が家にとって、印鑑紛失騒動はこれが初めてではありませんでした。(※かつての印鑑紛失騒動の顛末は、ぜひこちらの過去記事をお読みください👇)

👉 【過去記事】我が家を襲った最初の印鑑紛失事件は こちら と コチラ

印鑑紛失は厄介です。なぜなら、特に「銀行印」の紛失は、実務的に最もやっかいだからです。

印鑑は、今後のデイサービスやショートステイなどの介護サービスを契約する際に絶対に必要な命綱。

それにもし紛失届を出して銀行印の変更手続きをしようにも、認知症が進みつつあるサニーちゃんが窓口で上手く手続きできる保証はどこにもありません。

最悪の場合、銀行側に「本人の意思確認ができない」と判断されれば、一発で【口座凍結】になってしまうリスクがあります。

(口座凍結だけは、何としてでも絶対に避けなきゃいけない……!)

私は血の気が引く思いで、とにかく考えられる場所を片っ端から探すことにしました。

3. 昼食も食べずに大捜索:娘がそばにいすぎるのが悪いの?

机の引き出しはもちろん、家中の棚という棚、引き出しという引き出しをすべてひっくり返しました。

サニーちゃんが「隠しそうな場所」を推理しながら、靴箱にある靴をひとつ一つ手に取り、中を覗いてひっくり返しても、お目当ての印鑑は影も形もありません。

朝から必死に探し続け、気づけば時計は昼を大きく回っていました。お腹が空いていることすら忘れるほどの、探しました。

探しながら、私の頭の中では虚しさと疑問がぐるぐると渦巻いていました。

(なんで? 通帳が見つかってから、今回の印鑑がなくなるまでの期間が短すぎる。
サニーちゃんのために実家に来る日を増やしたし、一緒にいる時間も長くした。
これだけ寄り添っているのに、まだ不安が消えないの?
それとも、逆に娘がそばにいすぎるのがプレッシャーになって、悪い影響を与えているのかな……?
一体どうしたらいいんだ……)

やってもやっても報われない努力に、猛烈な孤独感と疲労感が押し寄せてきます。

しかし、このまま殺気立った空気で探し続けても、お互いの心が削れるだけです。私はふっと手を止め、深呼吸をしました。

「サニーちゃん、お互い疲れちゃったね。印鑑は絶対にお家のどこかにあるからさ。焦らずゆっくり探していけばいいじゃん。ちょっとお茶にして、おやつでも食べようよ」

努めて明るく提案すると、サニーちゃんも「そうねぇ」と即座に賛成してくれました。

サニーちゃん自身も、心底疲れているはずです。客観的に見れば「自分がどこかに隠して忘れただけ」なのですが、彼女の頭の中では「本気で誰かが家に入り込んで、自分を困らせるために隠した」というホラー映画のような恐怖の中にいるわけですから。

「急いで見つけなくても、死ぬわけじゃない」 私は自分自身にもそう言い聞かせ、まずはサニーちゃんの心が穏やかになるよう、温かいお茶を淹れました。

4. 奇跡の発見、そして「姉妹の介護方針」の小さなズレ

この日の大捜索では結局見つからず、私の心は完全に折れかけていました。

(もう嫌だ……。こんな不毛な探し物は二度としたくない。今度印鑑が見つかったら、絶対に私が預かろう) 心の中で、そう強く誓ったのです。

しかし、この「良かれと思った決意」が、また新たなトラブルを引き起こす原因になるとは、この時の私は知る由もありませんでした。

この大騒動から数日後のこと。 今度はオネちゃん(姉)が実家に行き、サニーちゃんと一緒に印鑑探しをしてくれたのです。すると私のスマホに、オネちゃんから1通の電話が入りました。

「印鑑、見つかったよ!」

私は受話器の向こうでホッと胸をなでおろすと同時に、すかさずお願いしました。 「オネちゃん、お願いだからその印鑑、そのまま預かっておいて!」

しかし、オネちゃんの考えは違いました。
オネちゃんはサニーちゃんの「自分で管理したい」というプライドや気持ちを大切にしてあげたかったのです。

結果として、オネちゃんは印鑑を、元の保管場所へと戻しました。

「……また絶対に失くなるのに」

電話を切ったあと、私は激しいがっかり感と、なんとも言えないモヤモヤした気持ちに包まれました。

私の「もう疲れ果てたからリスクを無くしたい」という思いと、オネちゃんの「母の尊厳を守りたい」という思い。どちらも正解だからこそ、ぶつけどころのない未消化な感情が胸に残ります。

そして、この私の心の中に残った小さな「予感」と「未消化のモヤモヤ」が、引き寄せの法則のように、再び我が家をさらなる印鑑紛失の大嵐へと巻き込んでいくことになるのです……。

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