物取られ妄想〜通帳・その2

事件

この記事を読むと、私がサニーちゃんの言葉をどう受け止め、どのように対応したかがわかります。

土曜日の朝
朝のコーヒーを飲むとすぐに実家へ向かった。
「おはよ〜ございま〜す!」と大きな声で家に入ると、サニーちゃん(母)は薬を飲もうとしているところだった。突然の訪問に驚きながらも、どこか嬉しそうな表情。それからゆっくりとこちらに歩み寄り、私の胸に顔をうずめた。思わず私は、その背中をやさしくさすった。

通帳があった
「通帳を見せてもらった時、私が変な場所にしまっちゃったのかも…と思ってさ」と切り出すと、
サニーちゃんは「睡眠薬があと10日分しかないの」と答えた。
けれど、薬は食卓の上にまるまる1ヶ月分が置かれていた。
会話は噛み合わないが、昨日のような混乱は収まっているようだった。
「通帳はあったわ。念のために銀行口座を止めてあるから、また再開手続きしてこなくちゃ」
「そうだね。」
我が親ながらスゴいなぁ。しっかりしているなぁ。と驚いた。

話が見えない
「もう食べるものがないから、買い物に行きたい」と言うので準備をしていたところ、姉から電話が入った。
「ああ、オネ?あのね通帳があったの。いろいろ、ごめんなさいね。でもね、もうコレで全部水に流しましょう」
サニーちゃんが話している意味がよくわからない。
「だってね、私だって傷ついたのっ」とサニーちゃんは強く訴えた。

わたし
わたし

あー、どうしよう。サニーちゃんはまだ妄想から抜け切ってないんだ

電話の向こう側で姉が泣く声がきこえてくる。姉はすごく傷ついている。これ以上悪化させてはいけない。そう考えた私はひと息のみ込むと一気に言った。
「ごめんね。実はサニーちゃんが留守の間に家に入っていたのは私なんだ。黙っててごめんなさい」

話を合わせる
妄想に合わせた私の言葉に、サニーちゃんは満面の笑顔を浮かべ、まるで心から安心したようだった。電話越しの姉の泣き声はさらに大きくなった。
「もう、これで終わりにしましょう。これからは二人でコソコソ遺産分割の話をしないで」とサニーちゃんは言う。もちろんそんなことはしていない。
私はただ「サニーちゃん、ごめんね。オネちゃんも、ごめんね」と繰り返すしかなかった。そうして電話は、静かに終わった。
                                      その3へ続く

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