介護者の葛藤。まさかの「行きたくない」クレーム
リハビリデイに通い始めて数カ月が経ち、サニーちゃん(母)の生活リズムが整ってきた頃、私は「ああ、デイサービスにも慣れてくれたんだな」と心から安心していました。
しかし、そんな安堵は一瞬で打ち砕かれました。
デイサービスから帰宅したサニーちゃんは、電話口で尖った声でこう言ったのです。「あたし、リハビリデイやめようかな…」
せっかく見つけた居場所。私は正直、平穏に通えないのではと思っていたものの、こんなに早くクレームが来るとは予想していませんでした。大人なので行きたくないなら行かなくてもいいのですが、介護者としては、本人の生活にメリハリをつけて欲しい、少しでも一人で過ごす時間を減らしたいという思いがありました。
母の不満の理由。軽視できない「人間関係」の悩み
「えっ、なんで?何かあったの?」と聞くと、サニーちゃんは不満をぶちまけました。
「デイにすごく嫌な意地悪な人がいるのよ。私のこと何歳かとか、どこに住んでるんだとかいろいろ聞いてくるの。でも、絶対言わないわっ!」
サニーちゃんは昔から年齢を聞かれるのが大嫌い。見かけが若いのが自慢で、実年齢を言うのが嫌なのだと思います。
「そんなの気にしなければいいんだよ」と言いたいところでしたが、そこはグッと我慢。私は「じゃあ、来週ケアマネさんが来るから相談してみようよ」と提案すると、サニーちゃんも「そうね」と納得してくれました。
プロの技。ケアマネさんが実践した「完璧な傾聴」
ケアマネさんの訪問日、サニーちゃんはデイでの出来事を話し始めました。当時の様子を思い出したのでしょう、だんだん怒り始め、声が大きくなっていきました。
「その人は、足の運動をしていた時に、私がちょっとつまづいたら、『フフフ』って笑ったんです。それで、嫌な人だと思ってそばに行かないようにしたんだけど、お茶の時間に隣になってしまったの。そしたら、私のことを根掘り葉掘り聞いてくるから、本当に嫌になっちゃって」
ケアマネさんはサニーちゃんに同情している風な表情で、ただただ、耳を傾けることに徹していました。余計な相槌は一切ありません。
「だから、もうデイをやめようと思います」とサニーちゃんが話を締めくくると、ケアマネさんは穏やかにこう返しました。
「あら、そんな。やめることないですよ。でも、そういう方ってどこにでもいるから困りましたね。私の方からデイの方にお話ししておきましょうか?」
すると、サニーちゃんは少し考え、「でも、スポーツジムにも嫌な人はいたけど、上手くやってこれたから、もう少し頑張ってみる。そばに行かなければいいのよね」と言い出したのです。
ケアマネさんはその言葉を上手に拾い、「そうですよね。スポーツジムには長いこと通ってらっしゃいますものね。いろいろなことがありましたでしょ?」と尋ねました。サニーちゃんも「そうなのよ。私も大人だから上手にやってきたの」と誇らしげに答えました。
介護は一人で抱え込まなくていい。頼れるプロの存在
「では、また来月にお話をお聞かせくださいね。その時にどうするか決めましょう」
ケアマネさんのこの言葉で、サニーちゃんは気持ちに区切りがついたようでした。
もし私が「デイサービスに行った方がいい」と説得していたら、サニーちゃんのプライドを傷つけ、本当にデイサービスに行かなくなっていたかもしれません。しかし、ケアマネさんは傾聴のプロでした。サニーちゃんの気持ちに寄り添い、自分で解決策を見つけられるように導いてくれたのです。
介護は一人で抱え込む必要はありません。心強いケアマネさんがいてくれたおかげで、サニーちゃんは今もお休みなくデイサービスに通い続けています。この経験を通して、私は改めてプロの存在の重要性を実感しました☺️
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