サニーちゃんの物取られ妄想を乗り越えた翌日。
私の体に異変が起きた。
事件の翌日。
何事もなかったように過ごそうと、私はただ「普通」を意識して動いた。
朝はプールでひと泳ぎ。
帰りに1週間分の買い物をすませ、家に戻ると休む間もなく洗濯機を回し、洗車までこなした。
夕方には、義両親と外食に行く予定があったから、それまで気を緩めず動き続けた。
頭を空っぽにしたくて、体を動かし続けた。
でも――その「無理」は、突然、静かにやってきた。
食事中、ふと世界が揺れ始めた。
めまい。耳が詰まったような感覚。
来た――これはアレだ。耳石がずれたときの、あの感じ。
レストランから車まで奇跡的に歩けた。
義両親を送る。
でも、その途中に吐き気が込み上げてきた。
目を開けると、視界がぐるぐる回る。目を閉じても、世界が洗濯機の中みたいに回り続ける。
窓を開け風を顔に当てながら、ただ祈った。
「どうか、おさまって…」
でも、ダメだった。
小さな声で夫に伝える。「先にウチに行って…」
義両親は気づかず、いつも通りの会話に花を咲かせている。
私は横で必死に込み上げるものを手で受け止め、そっとバッグの中に押し込んだ。
声を出さないように。気づかれないように。静かに、必死に。
ようやく家に着いたときには、もう限界だった。
靴も脱がず、まっすぐトイレへ駆け込む。
脂汗で体はびっしょり。立ち上がれないし動けない。
最悪の夜だった。
吐きながら思った。
――あぁ、やっぱり無理してたんだな、私。
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